017:腕の中




 キスを強請ると、額にひとつ。口をとがらせて不満を訴えると、今度は頬に。ちゃんとしてと訴えても、微笑って瞼やらこめかみやらに音を立てて触れるだけだ。(いまは口にして欲しいのに!)

 しばらくそうだったのでもういいよとあきらめて離れようとすると、腕に力を込めて出してくれない。いったい何を考えてるんだと見上げると、眼鏡をしていない眼が思ったより近くにあって驚いた。
 頬に彼の髪がかかる。息ができない!とわたしがギブアップするのはこのもう少し後のことだ。自分から誘ったんだから責任をとらなくちゃいけない、って(誘ったつもりはないのに)、出してくれなかったけれど。