031:落書き
ソファに寝転がっていると、嬉しそうな彼女が上に乗ってきたのでどきどきした。
積極的なスキンシップだ。あまりないことである。
どないしたんと訊くと彼女は手に握り締めたものを見せてくれた。油性マジックだった。
…油性マジック?
「ま、まさか」
「大丈夫よちょこっとだから」
青い顔で最悪の予想をする俺に彼女は優しく笑いかける。
ね、侑ちゃん、とこれまた可愛く首をかしげて、それはそれで嬉しいのだがそんな場合じゃない。
マジックのキャップをはずそうとする手を必死に押さえた。
「もお、侑ちゃんの意地悪…ッ」
「えッ(どきッ)」
なんでこんな時ばかり侑ちゃんて呼ぶのだろう。いや、こんな時だからなのだが。
思いっきりぶりっこして言うので普段してくれない仕草に動揺してしまう。
いや、あかん…!
わずかな隙をついて彼女がキャップを外した。
満面の笑みが眼に入り、腕を押さえようにも力を入れすぎてしまいそうで上手く押さえられず、あれよあれよと言う間に悪魔の切っ先が近付いて来る。
「い、いやーー!」
思わず上げた悲鳴は虚しく天井にあたって消えた…。