032:陽のさす窓辺
『おでこに“肉”事件』から小一時間、奴はしばらく窓辺で外を眺めてたそがれていた。
さすがにやり過ぎたか。にしても長いな。
「もういいじゃん、水性だったし落ちたんだから」
そばへ言って背中を軽く叩いて謝る。
奴は油性だと思い込んでいたらしいけれどちゃんと水性にしたんだ。
ちょっとしたお茶目なのに。
「……汚された……(純情が)」
奴がぽつりとつぶやいた。へえ、そういうこと言うの。
「あんただってあたし汚したじゃん」
ボソッといってやると奴が弾かれたように振り向いた。
眼鏡が光っていてちょっとこわい。
「女の子がそんなこと言うたらあかん!」
奴はいじけていたことなど今の衝撃でさっぱり忘れたらしく、青い顔であたしの肩をつかむ。
だから眼鏡が光っててこわいってば!