065:海




「なあ、
「ん〜?」
「夏になったら海行こか」
「嫌」
「…何で」
「潮風べたべたするから嫌い」
「ならプール…」
「嫌」
「何で!」
「泳ぐとおなかすくから嫌い」
「(それがええのに…) 泳げないだけとちゃうん」
「……あァ?」
「あッ、いやいや、あははなら夏は何処行きたいは」
「映画館」
「…夏やで?パーッと外に…」
「夏だからでしょ?」
「…………。まさか」

「そのまさか」


にっこり。
そんな言葉がしっくりくるような作り笑顔で彼女は言った。
邦画ホラー見にいこうね。や、やっぱり!

一緒に海に行きたくて誘ったのになぜこんなことに。
しかし後悔してももう後の祭りだ。この笑顔が出て来たらもう、強制的に(正しくは脅されて)映画館に連れて行かれることだろう。


「大丈夫、見た日の夜からしばらくずーっと、怪談漬けにしてあげるから」
「何が大丈夫やねん!もういやーッ!」