080:ふたり




名前を呼ぶ声が耳朶をくすぐる。
夢うつつで返事をすると髪を梳く指。落ちるのは口づけ。
くすぐったくて柔らかくて笑みが零れる。もう一度訊いた。なあに?

何でもあらへんよと静かな声が帰って来て、直ぐそばにある指が頬をなぜる。
朝方の微睡みはただやさしく、ぼんやり霞む意識が心地良い。

忘れえぬ指のかたちが心に触れるようで。