そうかなぁ、涙で揺れる声が吐き出すように言った。大丈夫、きっとあの子は幸せやったよ。そう慰める俺にしがみついて、彼女は悲しみにくれている。
 俺にとっては紙に綴られた悲哀よりも、ただ彼女が悲しくて泣いている、その事実の方が重要であるのだった。世界の中心は紛れも無くこの少女だ。太陽も月も、彼女の周りを廻っているに違いない。その少女が大粒の涙をこぼして震えている。
 憂いと悲しみを拭ってやりたい、そう思いながらも、小さな体が腕の中でしゃくり上げるのを見るにつけ、体の裡にて膨れ上がるものがあった。生きている命、嗚咽が細い肩を揺らす。小さな手が俺の服を握りしめていた。
 本当はただ熱に溶け、自分が及ぼす影響で涙を零す、その顔が見たい。
 庇護欲と劣情を同時に刺激する、きっとこの少女はじきに泣きつかれて眠るだろう。いっそ早く眠ってくれないだろうか。甘い傷を刻みたくて堪らない、この腕が大人しい今のうちに。