030:命




 惜しまれるひとほど早く喪われると云うけど、それではあんたはどうなの。早く喪うのかな。そんなの真っ平だけどねえ、どうなんだろう?独り言の様に、殻に閉じ籠って。答えられる筈もない問いを繰り返した。
 私は視線を上げないけれど、そのひとは手のひらで頭をぐしゃぐしゃかき回す。
どんな表情をしているか想像するのは容易い。きっといつもみたいに困ったように笑っているんだろう。

 どうしようもないって思ってるのかな、でもそれでも如何しても喪くしたくないんだ。
 孤独でも寂しくもない黄昏にふと不安になるのは幸福の代償だろうか。喪う時のことなんて誰にも何も分かりはしないのに。