044:ソファー
ちょっとしたドッキリのつもりで朝4時に彼の家へ来てみた。勿論早起きしたんではなくて今まで起きていたのである。合鍵は彼女の特権で持っているから問題ない。
静かに鍵を開けて静かにドアを開いて静かに忍び込んで…。とまあ忍者ばりの静かさで中へと入ったわけだけど、目標の人物がベッドにいない。
部屋を見渡すと、ソファーに人影があった。
そっと近付くと熟睡する奴。開いた本が床に落ちているから、読んでいて眠くなってそのまま寝たのだろう。スポーツマンのくせに結構いい加減だ。わたしのことはごちゃごちゃ言うくせに、自分がこれじゃあ言う資格なんかないではないか。
とにかくこのままじゃ風邪を引いてしまう。まだ春なのだ、夜は寒い。…ということで。
とうッ!
「ぐはッ」
奴の腹の上にダイブしてやった。足から行かなかったのはせめてもの情けだ。死なれたら困るからなんだけど。悲鳴らしくない悲鳴をあげて奴は飛び起きた。
驚いたように回りを見渡して、わたしに気付く。それから三秒停止。
「………何すんねん…」
相当驚いたのか彼は片手で胸を、ていうか心臓を押さえながら詰めていた息を吐き出した。
「……ええと、こんなとこで寝てるから起こしてあげようと思って」
「それならそれでもっとましな起こし方してや…死ぬかと思ったわ…」
意外に小心者らしい。
いや、B級ホラー映画で悲鳴を上げるくらいだから意外ってほどでもないか…。
「死ぬほど重くないですー。っていうかこのまま寝てたら疲れとれないよ、ちゃんとベッドで寝なきゃ」
「せやな……て、今何時や?」
体を起こしながら奴が訊いた。わたしは時計を確認しながら答える。4時過ぎ。
「…。ちゃん、何で居るん?」
「寝起きドッキリをかまそうと思って」
「………」
正直に答えると奴は黙り込んだ。でも黙っていても目が語っている。またしょーもないことをとか、そんなこと考えてるに違いない。そういえば眼鏡してないな。転た寝してたくせに外したのか、器用な奴。
「まーええわ、寝るか…」
「うん、あたしも寝てないから一緒に寝る」
「………その寝る、にちょっとアレな他意が含まれていたりは」
「するわけねぇだろボケ」
すかさず邪な考えをチラつかせる奴に間髪を容れずにツッコんでやった。此処には惰眠を貪る為に来たんだから。