053:ポケット




 俺のポケットには幸せがいっぱい詰まってんねんで、と奴は丸眼鏡を光らせて言った。そんなわけないじゃんと軽く受け流す。また始まったよ、このロマンチストは。
 ほんまやって、と彼はその噂のポケットから取り出したチョコレートをあたしに握らせた。いま一番気に入ってるお菓子だった。

 見上げるとやたら満足そうな笑顔。右手は奴の左手につかまって、噂のポケットの中へ。
 素直に頂いたチョコとおどろくほどあたたかな右手に、幸せが詰まってるってのもあながち間違ってないかなと思った。もちろん、口にはしないけど。