世界中でいちばん大切な少女が、朝の日差しに、眩しそうな仕種で身じろぎをする。目蓋が震えて、愛しい魂がこの腕の中で目覚めようとしていた。
ああ、美しい眸が間もなく、目蓋を擡げて自分を捉えるだろう―――
そうしてそれから少女は、全く屈託なくプロポーズ紛いの発言をした後、非道なほどあっけなく眠りに落ちてしまったのだった。後朝の朝にすべき発言ではない。いや、これ以上ないというくらいロマンチックでふさわしいが、言ったあとコテンと眠ってしまうにはふさわしい台詞ではない、どう考えても。
昨夜、三年越しでやっと手に入れた。彼女のうつくしい心はこの腕の中にずっと在ったが、それでもやっとすべてを手に入れた気がした。ただ単に抱いたという事実ではなく、彼女が自分を受け入れてくれたという事実が。
意外にも彼女は怯えなかった。行為そのものには戸惑って震えていたが、俺自身に怯えることはなかった。涙に濡れて伏せられた睫毛もその向こうの双眸も、ちいさくやわらかなてのひらさえ、決して俺を拒みはしなかった。俺がこれまで恐れてきたものは、全くの杞憂に過ぎなかったのである。幼いとばかり思っていた心は、健やかに成長していたのだ。
彼女はひどく自然に、恐らくは本当に思ったことをそのまま口に出したのだろう。彼女はとても素直なのだ。出会ってからずっと変わることなく、そうして素直に俺を受け入れた。数年かけて、本当の意味で。
直ぐ傍で、は気持ち良さそうな寝息を立てて眠っている。規則正しい呼吸に柔らかな腹部が上下する。しなやかで小さくてまっすぐな命が、俺の腕の中で生きている。すこし癖のある髪がシーツに散らばって、きっと起きた時寝癖がついてしまっているだろう。それを直してあげるのも自分の役目だ。この先ずっと、変わることなく。
なにもかも なにもかも
(瞬くかがやきも燃ゆるいのちもすべてこの腕の中で)